研究成果 - 論文 -

国民健康保険の医療費と保険料の将来予測 -レセプトデータに基づく市町村別推計-

ノンテクニカルサマリー

 高齢化によるこれからの医療費の上昇が医療保険財政にどのような影響を与えるのかは、広く関心を呼んでいる。

 この研究では、福井県の17市町の国民健康保険加入者のレセプトデータ(2007年4月から2009年9月分)を集計して、2015、2020、2025年度の医療費と1人当たり保険料を推計し、保険財政の安定的な運営を図る上で参考となる情報を提供しようとするものである。

 国保財政の予測にレセプトデータの情報が必要とされるのは、高額医療費の再保険事業が拡大していること、および2008年度から前期高齢者の医療費が全国的に財政調整されることで、県あるいは全国単位で財政運営されている部分が拡大しているためである。市町村で完結する保険対象の医療費は、現在では少数派(約15%、筆者推計)である。これらの制度は費用負担構造が違うため、現実制度に基づいて財政予測をおこなうために、レセプトを費用負担制度別に集計した情報を作成する必要がある。

 医療費の伸び率を全県で一律とした場合では、福井県全域の1人当たり医療費は2009年度から2025年度には39.3%に増加すると推計される。しかし、市町別の増加率は、2025年度には最小で26.5%、最大で47.6%とばらつく。

 また、福井県全域の1人当たり保険料は、2009年度から2025年度には49.5%に増加する。市町別の増加率は、2025年度には最小で35.0%、最大で57.7%とばらつく。

 すでに再保険・財政調整がされている医療費の分は財政の市町村格差の原因とは基本的にはならないと考えられるが、それ以外の医療費の伸び率も、市町村間の人口構成の今後の変化によって市町村間に違いが生じる。ひとつの県のみの観察結果ではあるが、人口構成の変化によって自治体間で将来の医療費や保険料水準が異なってくるという結果が得られた。

 後期高齢者医療制度の改革に合わせて目指されている国民健康保険の都道府県単位の統合は、この研究で示された格差を縮小させることに貢献する可能性がある。

論文

「国民健康保険の医療費と保険料の将来予測-レセプトデータに基づく市町村別推計-」(PDF file/約340KB)

湯田道生・岩本康志・鈴木亘・両角良子
2011年度 日本財政学会、2011年10月22日-23日