研究目的

研究の目的

研究の目的及び特色

近年の医療制度改革では、長寿医療制度の創設、協会けんぽの都道府県別再編、国保共同事業の強化等、都道府県単位での地方分権化が急速に進んでいる。また、医師や介護ヘルパーの人材不足問題、生活習慣病対策等の最重要課題についても、地域間の偏在・相違は大きく、全国一律の健康政策の立案・評価よりも、地域別の政策立案・評価が重要になりつつある。

しかし、こうした地域単位の政策立案・評価に必要なデータ資源は、全国単位のそれに比べて未整備な状態である。そこで本研究では、健康施策の先進県である福井県の全面協力を得て、同県を例に、地域医療おける「根拠に基づく健康政策」の構築に向けて、必要なデータを整備し、それを用いた政策立案・評価を試行的に行っている。具体的には、まず、福井県国保連が保有する県内の医療保険・介護保険・特定健診の情報を個人間で接合した総合的パネルデータを構築している。また、このデータにはない高齢者の一次・二次予防活動の情報を補うために、県内において質問紙調査を実施し、上記データとの接合を試みている。

こうした総合的データベースの構築は、これまでもいくつかの研究プロジェクトで試みられてきた。しかし国保連の医療・介護レセプトの接合は、管轄する市町村保険者が個人情報保護の観点から利用を認めず、栃木県大田原市の研究例(文献1)以外に殆ど存在しない。また、健診データと医療レセプトの接合は被用者保険の研究例があるが(文献2)、国保でこれほど大規模に特定健診と医療・介護レセプトと接合することは、今回がほぼ初めての試みである。

文献1:菅原琢磨・南部鶴彦・開原成允・河口洋行・細小路岳史(2005)「介護保険と老人保健の利用給付関係の検討―個票データを用いた栃木県大田原市における例」田近栄治・佐藤主光編『医療と介護の世代間格差』東洋経済新報社

文献2:小椋正立編(2005)『生活習慣と健康、医療消費に関するミクロ計量分析』厚生労働科学研究補助金報告書