(岩本委員)

保険制度のリスク分散機能の評価が十分ではない

○ これまで財政支出削減とモラルハザード抑制の観点のみが強調され、患者負担増がおこなわれてきたが、リスク分散機能の低下による影 響も考慮した政策評価と意思決定が行われるべきである。そもそも望ましい患者負担の水準は,モラルハザード防止の便益とリスク分散低下の費用を考量して決 められるべきものである。

レセプトデータの電算化など、医療の透明化が改革のポイント

○ 医療費抑制策として平均在院日数短縮と生活習慣病対策が提案されているが、さらに医療費抑制のための個別施策の積上げが必要ではないか。個別抑 制策の積上げでは,患者の代理人としての保険者が予防により積極的に取り組んだり,医療サービス利用を評価することが重要な役割を担う。その活動の基盤と して、保険者機能の発揮のためにレセプトデータの電算化を図り,医療の透明性を高めることが必要。電算化の早期実現のためには,今までの取組みでなぜ電算 化が進まなかったかを公開の場で検証して,実効性のある施策を見つけ出すという作業をしてはどうか。

高齢化の進展に伴い、事前積立型保険制度の検討も

○ 諮問会議では2025年の医療費が議論の対象にされ、医療保険財政の議論で今まであまり取り上げられなかった長期的な視点を導入したことは評価 できる。そのような長期を視野に入れて制度改革を考えるのならば,事前積立型保険制度の創設も考えてはどうか。今後の人口構成の変化により、現役世代の拠 出で高齢者の医療費を支えるという現行制度の維持が困難になることは避けられない。

市場が機能する価格体系への転換と患者本位の選択を実現するメカニズムが必要

○ これまで診療報酬での評価による政策誘導が多用されてきたが,出来高払いで定率自己負担の報酬体系の下では、政策指導は効果的では なく,適切でもない。通常の市場では,財の消費量を増やしたい場合は価格を下げるよう誘導するが、診療報酬による誘導では価格を上げようとする。これは供 給側により多くのサービス提供を行わせるインセンティブを与えるものの、需要側の利用インセンティブを損なわせ,効果が相殺される。診療報酬の評価では, 市場メカニズムが働けば実現されるであろう価格体系にできるだけ近づけることを基本とすべきで,原価を反映した価格体系にするのが原則である(ただし,研 究開発費の回収が必要な新薬の評価等は除く)。患者のQOLを高める医療サービスを普及させたいならば,まず情報の周知を図ることで患者がそれを選択する ことを促す施策をとり,消費者主権の原則と整合的であるべきである。いたずらに価格体系を歪めることなく,患者本位で医療サービスの選択ができる診療報酬 制度を目指すべきである。


Last Updated: 12/19/05, Yasushi Iwamoto