計量経済学研究会議は,今回は経済企画庁および厚生省からのご参加もいただき,「社会保障の計量経済分析」というテーマで,合計22名の参加者により活発な議論が行われた。プログラムは以下の通りであった。
<7月13日>
セッション1 「医療・介護のミクロ計量分析」
座 長:橘木 俊詔(京都大学)
(1) Differentials in the Demand for Health Check-up in Japan
報告者:山田 直志(筑波大学)
討論者:福重 元嗣(神戸大学)
(2) 要介護者の発生にともなう家族の就業形態の変化
報告者:岩本 康志(京都大学)
討論者:永瀬 伸子(お茶の水女子大学)
(3) 公的医療保険と私的医療保険の代替性
報告者:滋野由紀子(大阪市立大学)
討論者:遠藤 久夫(学習院大学)
<7月14日>
セッション2 「社会保険の機能」
座 長:小椋 正立(法政大学)
(1) 失業給付は失業期間を長期化させるか?
報告者:小原 美紀(政策研究大学院大学)
討論者:橘木 俊詔(京都大学)
(2) Conjoint Analysisを用いた介護需要関数の推定
報告者:大日 康史(大阪大学)
討論者:安川 文朗(広島国際大学)
(3) 公的医療保険下における製薬企業の競争環境とR&D
報告者:中西 悟志(日本福祉大学)
討論者:杉原 茂(日本経済研究センター)
セッション3 「診療報酬のインセンティブ」
座 長:大竹 文雄(大阪大学)
(1) 老人保健拠出金と保険集団形成にかかわる考察
報告者:安部由起子(亜細亜大学)
討論者:尾形 裕也(国立社会保障・人口問題研究所)
(2) マルメ制度と医療機関の検査行動
報告者:小椋 正立(法政大学)
角田 保(大東文化大学)
討論者:西村 周三(京都大学)
<7月15日>
セッション4 「公的年金の課題」
座 長:岩本 康志(京都大学)
(1) 公的年金が生命保険加入行動に与える影響
報告者:駒村 康平(東洋大学)
討論者:木村 陽子(奈良女子大学)
(2) 公平性の基準と年金制度改革の効果
報告者:金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
討論者:大竹 文雄(大阪大学)
社会保障が今回の会議のテーマとして選ばれたのは,少子・高齢化社会での持続可能性への懸念,長引く不況下での保険料負担の上昇など,わが国の社会保障システムが多くの問題を抱えているからに他ならない。報告はいずれも重要な政策課題に取り組んでおり,参加者は社会保障の功罪を明らかにしようという認識を共有し,各セッションで非常に活発な討論がおこなわれた。緻密な実証研究を推進し,専門家による真剣な検討がおこなわれる場が今回の会議で提供されたことは,政策論議が事実を無視した空論になることなく,今後の社会保障研究が発展していくことの礎となったのではないかと考える。なお,報告論文の多くは,『季刊社会保障研究』誌の12月号に掲載される予定である。
最後に,本会議に多大なご援助を頂いた関西経済研究センターに対して,出席者を代表して心からお礼申し上げたい。